仲の良かった兄弟が親の死をきっかけに揉める…、そんな相続トラブルはいまやどこの家庭でも起こり得ることです。今現在仲がよくても「お金」が絡むと一気に冷ややかな空気になることも少なくありません。

それに、まだまだ元気な親が終活に向けて準備していると「そんなに急がなくても大丈夫」と、先のことだからとどこか遠目で楽観的な気持ちでいる人も多いかと思います。

しかし、いざ親が亡くなると「相続ってどうやるの?」「手続きにお金がかかる?」「そもそも誰に相談したら…」など、途方にくれてしまうものです。分からないからと放置すると、ますますトラブルが大きくなるかもしれません。

今回の記事では、相続の当事者になったときにやるべきこと、知っておくべきこと、注意点などを詳しく解説していきます。

 

実家相続は誰に相談すればいい?

親が生きているうちに手放さない限り、実家は相続することになるでしょう。動かない財産である不動産は、分配しにくいため、親族間で相続争いの発端となります。損をしたくないと自分の気持ちばかり主張すると並行線で決着がつきません。

それに、相続は法的な手続きなので専門家からアドバイスをもらうのは大事と言えるでしょう。

相続はいつ発生している?

まずは、相続がいつから発生しているのかについてお話します。家などの不動産は、亡くなった人が所有者のままでいることはできず、相続人へ権利がうつります。

実家の親が死亡すれば、「亡くなった瞬間~手続きをするまで」の間は、相続人みんなのもの。その後は、遺言書や法律に基づいて、「誰がどの遺産を受け継ぐか」「どのくらの割合で分けるか」などを遺産分割協議により決め、相続に関する手続きをしていきます。

そして話し合いによって、それぞれの財産を受け継ぐことになります。

誰が相続人なのか知ろう

初めに知っておきたいのが「誰が相続人になるのか?」という点です。

まずは「遺言書があるか」をチェックしましょう。

その内容によっては、「相続人は兄弟だけ」と思っていたのに、新たに別の人が相続人として指定されているケースも考えられます。それに、「家は長男」「貯金は次男」など、法定相続分とは違った分配方法になっているかもしれません。基本的には遺言書の通りに相続されなければいけません。後から慌てないように、まずは遺言書を探してみるといいでしょう。

遺言書の種類は3つ

ひとつめは「自筆証書遺言」です。

これは、故人が一人で自筆して作成した遺言書のことで、保管も自分です。そのため、遺品整理中に発見されることが多いです。机の引き出し、本棚、仏壇、神棚、タンスの引き出し、家庭用の金庫…など、可能性のある場所をチェックしましょう。

自宅になかったから遺言書がないと決めつけるのは早計で、なかには「銀行の貸金庫」「弁護士などの専門家」「信頼できる友人の家」など預け先の可能性はいくつかあります。

二つ目は「公正証書遺言」になります。

これは、自分の希望する内容を公証人に伝えて作成してもらう方法です。自筆証書遺言では、書き方の不備で効力がないケースも少なくありません。公正証書遺言は、公証役場で探してもらうことができます。

最後が「秘密証書遺言」です。

前述した「公正証書遺言」と似ていますが、ちょっと違います。自分で作成後、中を見られないように封印、そのうえで公証人に「遺言書である」と認めてもらう方法です。

そのため、どこに保管しているかは分からず、自筆証書遺言のように自宅保管やほかの場所を探すことになります。

遺言書を見つけたときの注意点

3つの遺言書のうち、公正証書遺言は「公証役場」で保管されていますが、自筆証書遺言および秘密証書遺言は見つけたときに注意がいります。

封印されている遺言書を見つけると「どんな内容なのだろう」とすぐに開封したくなりますが、勝手に開けると効力を失われます。

偽造を防ぐ意味で、家庭裁判所にて検認という手続きを踏まなければいけないので、見つけても自己判断で開けないように気をつけましょう。

遺言書がなければ法定相続人

遺言書がなければ、基本的に「法定相続人」が相続の権利を持ちます。

法定相続人には、優先となる順序があり「配偶者」「子供」「親」「兄弟姉妹」です。

そのうち、配偶者は常に相続人となり、子供がいなければ親、親もいなければ兄弟姉妹…という順位により相続されていきます。

本来相続するはずの子供や兄弟姉妹がすでに死去しているケースには「代わりに相続できる」という意味の代襲(だいしゅう)相続というものもあります。故人から見て孫も相続人となり、相続関係人の数が増えて複雑になる構図もよく見られます。

相談相手は専門家

自分一人だけが相続人というパターンもあれば、兄弟数人で相続するというパターンもあります。どの場合でも、さまざまな手続きを行っていく必要があり、自分たちだけで結論を出そうとすると揉めやすいです。

「売却する」というパターンを選択した場合、「すぐに売るのだから手続きはいらない」と思われるかもしれませんが、親の名義のまま売ることはできず、いったん相続人となる人へ名義を移し替えなければいけません。登記関係の相談は司法書士です。

また、売却する場合には、司法書士と並行して不動産会社へも相談することになるでしょう。

査定額は不動産会社によって違いますし、何社から見積もりをとって慎重に売却を進めていきたいものです。この場合なら、連携してもらえる司法書士さんを紹介してもらうのもいいでしょう。

我が家はどれ?実家を相続する13個のパターンと注意点とは?

相続した実家の今後の選択肢は、さまざまなパターンがあります。よくある相続パターンと注意ポイントを紹介していきます。

①空き家にしておくパターン

よくあるのが「空き家で放置する」というパターンです。

「実家が遠方にある」「兄弟間で話し合う時間がない」「話し合っても結論がでない」という背景から、実家をどうするかを保留するケースも多いのが現状です。いったん空き家で方放置するのは、実は空き家はさまざまな問題点があります。

家がどんどん劣化する

誰も住まないと、「掃除」「換気」といった日常的なメンテナンスができず、カビや汚れ、木材の傷みが現れてきます。それに、一戸建ての場合、庭の草むしり、外壁のメンテナンスもしていかなければなりません。庭先に蜂の巣ができたり、虫がたくさん発生したりと周囲に迷惑をかけることもあるでしょう。

目が届きにくくメンテナンスが怠りがちになるケースが多いですが、空き家にするという選択肢を選ぶなら、「周囲に迷惑をかけない」「建物の老朽化をおさえる」という心がけが大事です。

空き家管理は「税金」「管理費用」「手間」がネック

不動産の持ち主は、住人の有無は関係なく、税金をおさめる必要があります。

マイホームを持っていれば、「住んでいる自宅」と「空き家の実家」とダブルで税金がかかるのも大変かもしれませんね。

また、実家が遠方にあると、換気や掃除のために交通費をかけて定期的に行くのは難しいですよね。仕事が忙しいとなかなか時間も取れません。空き家管理のサービスを業者に頼む方法もありますが、それさえも費用がかかります。

自分一人が相続人だとこれらの負担が大きくなります。複数の兄弟で管理すれば負担が共有できると思いきや、「自分ばかりが管理をしている」「税金のお金を誰が払うのか」なので、揉めるケースも考えられます。

名義変更しないで空き家にすると…

名義変更をしないままの空き家は、さらなる問題点が出てくることもあるでしょう。

不動産に関する税金を残された相続人が代理で支払っていれば、名義変更をしていなくても法的に問題となるわけではないため、やらなければならない期限は特に決まっていません。

ただ、名義変更をせずに空き家として放置し、その間に本来の相続人が亡くなっていくとどうでしょうか。

その相続人の子供などにも相続権が広がっていくため、いつのまにかかなり複雑化した関係になるかもしれません。すると、「最終的に実家をどうするか」との話し合いがさらにまとまりにくくなります。

空き家にして放置するなら「管理はどうするか」「税金の支払いはどうするか」「名義変更はどうするか」などを含めて検討していきましょう。

②建物を解体して土地だけで放置するパターン

相続した時点ですでにかなり古い実家は、自分で住むのも人に貸すのも厳しいかもしれません。空き家で放置して倒壊のリスクを持つよりは、「建物を取り壊して更地にしよう」という選択肢もあります。その際の注意点はなんでしょうか。

名義変更で所有者を明らかにしてから

亡くなった人の名義のまま、建物の解体はできないので、いったん名義人の変更をしなければなりません。親のものだと安心していると、実は名義変更されておらず「祖父や祖母の名前だった」というケースもあるので注意が必要です。

土地になっても管理の手間はかかる

「建物がなくなれば、周囲に迷惑がかからないだろう」という思いから、家を解体するケースもあるでしょう。解体後には、きれいに整っているようにも思えます。しかし、誰も立ち入らない土地には、雑草が生え続け、次第に荒れた状態になることも。自分で草刈りに行けるのであればいいですが、範囲が広ければ業者への依頼が必要になるでしょう。

税金が高くなる

不動産を持てば税金がかかりますが、その金額は面積や建物の有無でも異なります。

面積によっても計算が違ってきますが、「家+土地」の場合、建物が建っていることで特例が受けられ税金負担が減ります。しかし、「土地だけ」の場合は、その特例が受けられないので、税金は高くなることを覚悟しましょう。

解体後の土地の使い道を考えておく

解体したとしても、どう活用することもなく時間が経てば、「早めに売っておけばよかった」という後悔が出てくるかもしれません。古い家は解体してからどうするかはきちんと考えておきましょう。

③名義だけ変更しておくパターン

とりあず、相続手続きにより名義変更するパターンもあります。

相続人が一人の場合、単独で名義の変更をすればOKです。後から揉めやすいのが何人かで「共有」するケースです。

親が亡くなったばかりのときは悲しみが大きすぎて、親が住んでいた思い出の実家を売る決断はなかなかできないかと思います。「親の法要のときに集まる家にしよう」と、名義だけを共有で変更しておくケースもあるでしょう。

ただ、共有名義にしておくのは結構なリスクが考えられます。数年後に「そろそろ売ろうか」と誰かが申し出ても、たった一人反対するだけで売ることはできません。それに、共有している人の誰かが亡くなれば、その人の持分だけ別の相続人へと名義が変更されます。

結果、あまり接点のない甥や姪も共有者となっていて、最終的に話がこじれて「売却」ができなくなるということもあります。

④土地だけ相続するパターン

一戸建ての場合、通常「土地+建物」がセットになって所有権というイメージかと思いますが、そうではないケースもあります。

例えば、親の所有していた土地に長男が家を建てている場合。相続人が長男一人であれば、特に問題はないでしょう。ただ、次男もいれば話は変わります。

長男と次男の2人が「土地」に関して相続する権利があるものの、建物はすでに長男の所有です。

仮に、土地を「長男と次男」で共有名義に変更したとしても、建物が建っている以上、次男には実質的に土地の売却や使用はできません。このケースでは、共有分に相当した金額を次男に支払うというのがトラブルを避ける方法のひとつとなります。

ただ、当事者同士で話し合いをしようとすると、「それは不公平じゃないか」「割合が納得できない」と土地を使用できない側から不満が出る可能性が大きいです。単純な相続ではないので、専門家に相談しながら、お互いが納得できる解決策を導いてもらうのがいいでしょう。

⑤建物だけ相続する

借りている土地に家を建てている場合、「建物だけ相続する」という形になるでしょう。

借地権とは何?

他人の土地に勝手に家を建てることはできません。そのため「家を建てるために地代を払って土地を借りる」という内容の借地契約を結ばなければなりません。「建物が親のもの、土地が他人のもの」の状態なら、借地権という権利のもと家が建っていることになります。

借地権は相続できる

借主である親が亡くなったからと借地権が消えるわけではなく、相続により「借地権」が自動的に相続人へとスライドするイメージです。相続した人が建物を所有している限り、土地は使い続けることができます。ただ、借地内容がどうなっているかは確認すべきです。

また、借地権を相続するとき、地主から承諾は特に必要ありませんが、今後の借地代の支払いの関係上、通知をしておいた方がいいでしょう。

⑥実家全てを売却するパターン

すでにマイホームを持っている子供達にとって、一人暮らしだった親が亡くなったからと言って「実家に戻ろう」と、誰かが住む結論にはなりにくいかもしれません。それに、兄弟が多ければ「売ったお金をみんなで分ければ揉めずに済む」という考えも出てくるかと思います。

家を売却するときの注意点を見ていきましょう。

リフォームをしてから売るべき?

基本的に、売る前に大がかりにリフォームするのは避けたいところです。

中古住宅を買う人は、「人が長く住んでいた」という点を理解して購入する人ばかりです。

新しさにこだわるなら、そもそも中古住宅は買わずに、新築住宅を買うでしょう。中古住宅は「自分の好きなようにリフォームできるのが楽しみ」と考えている人も多いです。

リフォームをした分、売却価格に上乗せして売ろうと考える人もいるかもしれませんが、買い手からすると「リフォームしなくてもいいから安くしてほしかった」というケースも少なくありません。

ただ、清潔感をアピールするのは大事なポイントです。トイレが黄ばみだらけ、浴槽がかびだらけ、壁紙に雨漏りの跡…など、不潔に感じる点があれば、部分的に直した方が売りやすいかもしれません。自分の判断ではなく、不動産会社に相談してから対応してみましょう。

相続登記をしてから売却をする

親の名義のままでは売却ができないので、いったん相続人の名義にしなければなりません。

売るために共有名義にするなら、誰が先頭となって売却を進めていくか決めましょう。

不動産売却は「不動産会社」が間に入って買主との手続きを段取りしてくれます。

基本的に、物件の所有者本人が契約やお金のやり取りに立ち会わなければなりません。ただ、共有名義の場合には、全員が同席するのは現実的に厳しいものです。共有名義で売却するときには、誰かが代表となって不動産会社とのやり取りをまとめるようにしましょう。

⑦相続して親と同居するパターン

両親が同時に亡くなる…というケースはあまりなく、平均寿命が短めな男性である父親が先に亡くなるケースが日本では多いかと思います。その場合、母親は実家に住み続けることになり、そこに同居という形で子供が住むというパターンもあります。

配偶者は常に相続人

基本的に、亡くなった父親から見て配偶者である母親は、常に相続人の位置にいます。ひとりっ子の場合、「母」と「子供」で半分ずつ分配するという流れになります。子供が2人のケースなら、母親が1/2、子供が1/4ずつというのが法定相続分です。

名義はどうするか

母と子供…と、二人の相続人が一緒に住む場合、「母名義にする」「自分名義にする」「母と自分の共有にする」と3パターンのどれかの名義変更パターンになるでしょう。

ただ、ほかにも子供がいる場合は注意が必要です。どのパターンにするにせよ、遺産分割協議をして全員が合意した名義変更にしなければなりません。

さらに母親が亡くなったときのことも想定

いったん母親の名義にした場合、いずれ次の相続の可能性が出てきます。子供が2人いれば、権利は半分ずつです。これまで同居している子供は「今後も住み続けたい」、別で住んでいる兄弟がいた場合には、「売ってお金にしよう」と考えるケースに少なくありません。

また、母親が亡くなった時点で「長男と次男」のどちらかが死亡していると、その子供たちまで相続人となります。相続人の数が増え、関係性が複雑になるのでトラブルを起こすかもしれません。

それを避けるには、父親が亡くなったときに、一緒に住む子供の名義にするという選択肢もあるかと思います。

兄弟間の分割方法とは?

父親名義の家を母ではなく、同居する子供の名義にするのも問題はあります。代償分割と言って家を相続した人が相続していない人へ現金を払ってバランスを取るケースが多いです。

例えば、兄が実家を引き継ぐなら、そのときに相続人となる人の法定相続分に合ったお金を渡さなければならないことになります。ただ、実際には売っていないので「本当にその価値しかないの?」「損をしたくない」と代償で支払われる金額に納得しないというケースも考えられます。専門家を交えて相談し、分割後にトラブルにならないように気をつけたいものです。

⑧相続して賃貸物件で貸し出すパターン

「自分は住むつもりがない」「売るのは抵抗がある」「空き家はもったいない」となれば、第三者に貸し出して活用しようという選択肢も考えられます。

賃貸物件にするメリット

人に貸すことで空き家にならずに済み、家の老朽化をおさえられるメリットがあります。しかも、借主がいるうちは、賃料という安定収入が期待できますね。立地や間取りなども含め、周辺相場から著しくズレない家賃設定をすれば、借りてくれる人も多いかと思います。

しかしデメリットも多い

人に貸して賃料は入りますが、出ていくお金も多いです。

家じゅうのメンテナンスは貸主側の責任です。

「トイレが壊れた」「水漏れがする」などの家の不具合が起これば、修理業者の手配や支払いについては、大家さんとしての行動をしなければなりません。それが手間となり、費用の捻出にも頭を悩ます可能性も出てきます。固定資産税などの税金関係も貸主側の負担、マンションなら管理費等の支払いもあります。

また、いったん賃貸物件にしたものの、管理や支出の不満から「やっぱり売却したい」と気持ちが変わるケースも考えられます。ただ、賃貸契約を結んで住人がいる以上、貸主側の一方的な事情により退去させることは難しいでしょう。

第三者が住めば「売りたいタイミングで売れなくなる」という可能性は想定しておいた方がいいですね。

⑨リフォームして自分が住むパターン

持ち家がなければ、実家を相続して住むという選択をするかもしれません。

あまり大きな問題は発生しないかと思いますが、注意点をみてみましょう。

会社や学校の距離は大丈夫か?

賃貸で暮らしていた場合、「相続して実家に住めば家賃が浮く」というメリットに惹きつけられるかと思います。

ただ、勤務先や子供たちの学校の距離との関係性も考慮したいところです。少しくらい離れていても「持ち家になるのだから我慢しよう」と考えても、あまりにも遠い場合には往復時間が長くなり、結果的に家で過ごす時間が削られてしまうかもしれません。

せっかく親が残してくれた家なのに居心地が悪いと後悔するのも悲しいことですね。

リフォームが必要なケースが多い

家を建ててからの年数にもよりますが、自分が住むためにリフォームをしなければならないケースもあるでしょう。

建築後30年を超えた家なら、大がかりにリフォームが必要かもしれません。

特に、これまでリフォーム履歴がない家の場合、手直ししなければ安全に快適に住めないケースも多々あります。

築年数が50年近くにもなるような家なら、現代の住宅建築と違う点が多すぎることから、耐震性や耐火性、断熱性などで劣っている可能性も…。

設備の交換、耐震補強、間取り変更など、家をまるごと大改造した方が安心して住めるかと思います。

一戸建ての場合、家の内部だけでなく、屋根や外壁のリフォームも必要なケースもあるでしょう。するとさらに費用がかかるかもしれないので、住むならどのくらいの範囲でリフォームが必要か、どのくらい費用がかかるかを比較してからにした方がよさそうですね。

⑩妻の実家を相続するパターン

自分の親の実家なら相続人は兄や姉、弟や妹など、顔や性格の知っている身内です。とことん話し合える関係性ですよね。

ただ、妻の実家を相続するときは、そういう訳にはいきません。

まず、基本的に、妻の実家の親が亡くなっても、妻の配偶者である夫は相続とは無関係であることを認識しておきましょう。婿となって妻の実家の姓を名乗っていても、それだけで相続人とはなりません。

しかし、妻の親と養子縁組をしていれば、妻の親から見て「養子」。妻や妻の兄弟と同じように、法定相続人となるので相続できます。

また、妻の実家を妻が相続した後、妻が夫より先に亡くなれば配偶者である夫が相続人となります。妻が兄弟と共有名義で実家を相続すると、将来的に他人である妻の兄弟との相続争いに巻き込まれる可能性も考えられます。

⑪相続を放棄するパターン

相続を放棄したいという状況もあるかと思います。

マイナス面を相続しなくてもよい

相続財産は、家や土地といった不動産のほか、「借金」というマイナス面もすべて対象です。負債が大きいケースでは、相続放棄により一切の財産を継承しない選択肢を取る人もいます。

遺産トラブルから回避できる

円満な親子関係を築いていれば、親の残してくれた財産を受け取りたいと思うのは普通かもしれません。ただ、「幼少時に離れ離れになった親の遺産はいらない」「相続争いに巻き込まれるのはウンザリ」など、面倒なことからの回避策として相続放棄をするというケースもあります。

相続放棄には期限がある

相続放棄は、手続きをする期限が設けられています。

「親の死を知らないうちに期限を過ぎた」というケースもあるかと思いますが、「親の死を知った時点から3か月まで」が期限です。もし、生き別れとなった親が亡くなったと知ったら、3か月以内にその間に放棄するかどうかを考えましょう。

相続放棄に関しては専門家へ相談を

マイナス資産が多ければ相続放棄が得策にも思えますが、「本当に放棄してもいいのか」と悩むケースもあるでしょう。相続放棄にはタイムリミットもありますし、手続きをしてしまったら「やっぱり取り消したい」もできません。

自己判断で後悔しないためには、専門家へ相談したほうがいいでしょう。

⑫二世帯住宅の実家を相続するパターン

二世帯住宅の場合、生前の親の面倒は親と同居している子供が主にやっていたかと思います。

親がその事情を汲み、「二世帯住宅は長男に譲る」という内容の遺言書を残しておいてくれると比較的トラブルが少ないですが、実際には遺言書がないケースも多いです。

兄弟が複数いれば、「親の世話をしていたのだから自分がもらうのは当然」と主張する長男、「自分も子供だから半分は権利がある」と譲らない次男…と相続争いをすることもあるでしょう。

次男夫婦は「二世帯住宅を売って現金を半分にしよう」と提案してくるかもしれません。

個別の状況により解決方法は異なりますし、兄弟同士で話し合ってそれが不満となり今後仲が悪くなるケースもあります。分けにくい不動産なので、専門家に相談しながら納得できるようにじっくり話し合うことが大事です。

⑬アパートを相続するパターン

実家の親が節税対策でアパートなどの賃貸経営をしている場合もあるでしょう。一見「安定した収入が期待できる」と思われがちですが、一般的な住宅を相続するのとは違い、気をつけることが多々あります。

築年数によっては厳しい資産となる

賃貸物件で注目されるのは、好立地で築浅の物件です。そのため、築年数が何十年にもなるアパートだと、今後の空き室リスクはさらに高まるでしょう。空き室が多ければ多いほど収入は少なくなりますしかし、一方では老朽化が進むので、修繕費用が嵩みます。相続時点で経営難はもちろんのこと、今後少しずつ経営状態の悪化に悩むケースも多いです。

親が亡くなったときに相続を放棄するという方法も回避策のひとつです。

売却するという方法もある

「不労所得」として注目されているアパート経営は、仕事の傍らオーナー業をこなすのはとても難しいでしょう。

管理会社にまかせるのもひとつの策ですが、「自分にはやはりアパート経営をするのは向いていない」となれば、売却という方法もあるかと思います。

ただ、ローンが残っていれば残債によっては売却が難しいケースもありますし、住人たちとのやり取りをどうするかの問題点もあります。どのくらいで売却できるかも素人判断は難しいので、不動産会社、金融機関など、専門機関からアドバイスをしてから検討した方がいいでしょう。

実家相続で気を付けたいこと

実家を相続するパターン別に、特徴や注意点をお伝えしましたが、総合的に気をつけておくべきポイントをいくつか紹介します。

相続登記に関するトラブルは多い

家を相続により引き継ぐ場合、「この不動産の所有者は○○さんから××さんへと変わる」という名義変更の手続きが必要になってきます。

それが「相続登記」です。

相続した実家を売却する、あるいは解体するというパターンでは、故人名義のままでは不可なので速やかに名義変更をしましょう。

ただ、その家に住み続ける場合には、相続登記の緊急性がないことから、放置しているという人もいます。「故人が亡くなってからいつまでにやらなければならない」と相続登記にタイムリミットが法により設定されているわけではありません。

しかし、この「名義変更をせずに放置」は、今後さまざまなトラブルを生みやすい状態です。

相続人が増える

例えば、当初「兄と弟」と2人の相続人だったのが、兄の死亡によりその子供たちが新たな相続人として登場するケースもあります。2人だけだったら話し合いしやすい状況でも、人数が増えることでさらに話がまとまりにくくなってしまうでしょう。

気持ちが変わる

「何年か後に売ろう。そのとき名義変更をしよう」と相続人同士で話し合い、名義変更をせずに放置するケースもあるでしょう。ただ、数年経って気持ちが変わる可能性はゼロではありません。

何人かのうち誰かひとりでも「やっぱり売るのは止めよう」となれば、売りたくても売れない状況になってしまいます。

実は親の名義ではなかった

親が住んでいた家は、親の所有と思うのは当然ですよね。しかし、古くからの家だった場合、実は「祖父の名義だった」というケースもよくあります。

父親の名義なら相続人は自分と弟だけなんていう実家も、祖父の名義なら話は変わります。

あまり付き合いのない叔父や叔母も相続人の可能性があります。もし、叔父や叔母が他界していれば、その子供までも相続登記に関係してきます。放置するほどに、本来の相続人が亡くなる可能性が出てくるので、やはり早めの相続登記はトラブル防止のためには必要と言えるでしょう。

実家の名義変更は専門家へお任せがおすすめ

名義変更は、基本的に司法書士へのお願いになります。司法書士への報酬以外に、登録免許税という費用も発生します。

登録免許税は、その不動産の評価額によって費用が変わります。評価が高い家ほど、額が上がると考えておきましょう。

また、司法書士へ払う報酬は、その事務所によって開きがあります。数万円で受けてくれるところもあれば、十数万円ということもあります。ただ、相続人の人数がどのくらいか、共有名義で複雑化していないかなど、さまざまな要因で報酬も高かったり低かったりなど変わります。

司法書士への報酬部分をおさえるには、自分で名義変更するという方法もあります。ただ、相続人の戸籍関係の書類を取り寄せたり、遺産分割協議書を作成したりと手間がかかります。

相続人が多ければそれだけ労力がかかるうえ、不備があって手続きがスムーズに行われないことも考えられます。

「手間がかかっても費用をおさえたい」「間違いなく手続きを進めたいから費用はかかってもいい」など、それぞれの考えに合わせて名義変更をプロに頼むかどうか考えたほうがいいでしょう。

「とりあえず」という気持ちで共有名義はNG

相続人同士で「売る・売らない」と話がまとまらないと「とりあえず共有名義にしておこう」という一時しのぎの結論が出るケースがあります。すでにお伝えした通り、共有名義の期間が長いほど、状況が変わりやすいです。

兄弟だけで共有したつもりでも、途中で誰かが亡くなれば甥や姪も関わります。さらに甥や姪が亡くなっていれば、その子供たちまで…。見知らぬ親戚とトラブルが勃発する可能性が大きくなるので、簡単に共有名義にするのは避けたほうがいいでしょう。

「いったん」と軽はずみに空き家にするのはリスクが高い

簡単に空き家にするのも避けたほうがいいでしょう。家は、空き家にすると人が住んでいるときよりもスピーディーに古くなっていきます。空き家の期間のメンテナンスが行き届いていないと、数年後に住み始めることになったとしても修繕が必要になることが多いでしょう。

特に、水回りのトラブルは多いです。

水道を止めていたことが原因で、水道管の錆びや傷み、機器の故障もよくあります。

古い家の配管でありがちですが、冬季間の凍結により、いつのまにか配管が破裂していることもあるでしょう。数十万円もの修理代がかかるので、空き家にするなら定期的に水道を出すなどしておくことも大事です。

実家を相続した場合にかかる税金は?節税対策にはどんな方法がある?

「相続=相続税」というイメージがあるため、「親の実家を受け継ぐのに税金がかかるなんて…」と損をした気がするかもしれません。

どのくらい納めたらいいのかも心配になりますよね。また、税金をおさえられる方法があれば知りたいと考えるものでしょう。

実家相続で覚えておきたい税金についてお話していきます。

相続税の計算方法と手続きについて

結論から言うと「相続税」に関してはそれほど気にしなくていいケースの方が多いです。

世間で起こっている「相続」のほとんどは、相続税が「ゼロ」と考えてもいいでしょう。

相続税には、免除される部分となる「基礎控除額」があります。

基礎控除部分は、「基礎控除3,000万円+(法定相続人の数×600万円)」という計算方法となります。つまり、自分一人が相続人のケースで考えると、3,600万円以上の資産に対して相続税がかかるというわけです。

仮に、法定相続人が3人いれば「基礎控除3,000+(600万円×3人)」で、4,800万円までは課税されないと考えればいいでしょう。

もし「貯蓄と家の評価で3,000万円」というケースなら、上記の計算方法に基づいて相続税不要です。

登録免許税がかかる

相続で名義変更をする際に知っておきたいのが「登録免許税」です。所有者が変わる旨を登記する際に、必ずかかるお金です。

土地および建物ともに、相続で所有権を移転する場合、1000分の4の税率になっています。

納税通知書に記載されている金額を参考に計算してみるといいでしょう。課税標準額が12,000,000円の場合を例にとっての計算例です。

「12,000,000円×4/1000=48,000円」となり、48,000円がおさめるべき登録免許税です。

通常、相続登記は司法書士を通じるケースが多いので、登録免許税のほか、報酬を支払うことになります。

実家売却で活用できる特例「3000万円控除」

不動産を売れば、利益分が課税対象となり、税金を支払わなければなりません。

空き家となった実家を売却したときには、「相続空き家の3,000万円控除」の特例が受けられます。実家を売ったときに利益が3,000万円までなら、税金が発生しないのです。

ただ、「相続してから3年までの間に売ること」「相続開始前まで故人が住んでいたこと」「昭和56年5月31日以前に建築された家」「売却前に空き家だったこと」など、いくつかの要件をクリアする必要があります。

また、この控除はいったん賃貸物件として第三者が借りて住んでしまうと上記の要件を満たさなくなるため、「相続⇒賃貸⇒売却」という流れでは、適用の対象外になるので注意しましょう。

実家相続でおすすめの方法

実家の使い道は、大きく分けて「自分が住む」「そのまま空き家にする」「売却する」「賃貸に出す」「土地活用する」などの方法があります。

ひとつひとつにメリットやデメリットがありますし、どの方法も費用や労力はかかってしまいます。

それに、実家の状態や相続人の経済状況も異なり、「みんなが納得できる」「トラブルが起こりにくい」「公平な」というベストな選択はそれぞれ違うでしょう。話が平行線「とりあえず空き家」「とりあえず賃貸」と安易に保留状態にすると、後からさらなるトラブルが出てくる可能性があります。

相続人同士でじゅうぶんに話し合い、相続人が増えないうちに結論を出すことが大事です。

「現段階で活用法がない」「将来的に住む可能性がほぼない」「今後揉めたくない」ときには、売却するのもいいでしょう。売ったお金を分配すれば公平になりますし、揉める材料がなくなるので今後の関係性を悪くするリスクを回避できます。

相続人同士だけで話すと、自己主張ばかりで話が進まないケースも多々あります。

実家の相続は、専門知識も必要でデリケートな背景もあるため、方向性がまとまらないときは専門家も交えることで、解決の糸口が見えたり、トラブルを防いだりもできます。

実家相続のまとめ

相続財産が実家だけ…というケースはとても多いです。現金と違って分配しにくい性質であるため、揉める人が続出しています。揉めずに分けたいところですが、「この方法がおすすめ」というベストな選択肢はケースバイケースです。

思い出のある実家を分けるのは、兄弟にとっても苦渋の決断となる場合もあるでしょう。

「どうしたらいいか分からない」「難しい点が多すぎる」と感じたら、売却のプロとなる“不動産会社”、相続登記を依頼するなら“司法書士”、税金面が気になるなら“税理士”、すでに揉めているなら“弁護士”など、それぞれの専門家へ相談して、円満に解決できるようにつとめたいものですね。