田舎に両親が住んでいる場合などには、親の死亡によって空き家を相続してしまうことが多いです。
この場合、まずはどのようにして相続手続きを進めたら良いのかが問題になります。
また、相続した後、空き家をどのように活用するのか、または処分するのかも検討しなければなりません。
そこで今回は、空き家を相続した場合に必要になる手続きと、空き家で最も多い活用方法をご紹介します。
この記事は、
1.空き家の手続きが分からない方
2.空き家の活用方法を知りたい方
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空き家相続の手続き
空き家を相続したら…相続人調査をする
空き家を相続した場合、まずは相続手続きをしないといけません。
放置しておくと、空き家の名義が被相続人のままになって外からは誰が空き家の所有者かわからなくなりますし、空き家を放置したことによって他人に迷惑をかけたら、相続人が責任を負わないといけなくなるおそれもあるからです。
相続手続きを進めるときには、まずは相続人調査をしなければなりません。
相続人調査とは誰が相続人になっているのかを調べる手続きです。
遺産相続が起こったとき、相続するのは法定相続人です。
そこで、被相続人(亡くなった人)にどのような親族がいて、誰が法定相続人になるのかを判断しないといけないのです。
相続調査をするときには、被相続人が生まれてから死亡するまでの間の、すべての戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本を集める必要があります。
このことによって、今まで知らなかった被相続人の子どもなどの相続人が明らかになる可能性もあります。
遺産分割協議を行う
相続人調査によって誰が法定相続人になるのかが決まったら、相続人が集まって「遺産分割協議」をする必要があります。
遺産分割協議とは
相続人が全員集まって、遺産の相続方法を話しあって決めるための手続きです。
具体的には、誰がどの遺産を相続するのかを決めます。
空き家を相続する方法にはいくつかの種類がありますが、まずは特定の相続人が全部取得する方法があります。
次に、空き家にある程度の価値がある場合には、空き家を相続する相続人が、他の相続人に対して代償金を支払う方法も利用できます。
さらに、空き家を売却して現金で分けてしまうことも可能です。
まず最初に、方法を知りましょう。
①特定の相続人が全部取得する方法
②他の相続人に対して代償金を支払う方法(※価値のある空き家の相続人が他の相続人に支払う)
③空き家を売却して現金で分ける方法
これらの方法を通して、遺産分割協議が成立するには相続人全員が合意する必要があります。
誰か1人でも反対していたら、遺産分割協議は成立せず、空き家を相続する手続きを進められなくなります。
どうしても相続人間で意見が合わないときには、家庭裁判所で遺産分割調停をしなければなりません。
遺産分割調停では、裁判所の調停委員が間に入って話をすすめてくれて、相続人同士が遺産の分割方法で合意ができるように調整してくれます。
それでも相続方法に合意ができないなら、家庭裁判所に「審判」をしてもらい、空き家の相続方法を決めてもらう必要があります。
相続登記をする
遺産分割協議や調停、審判によって空き家の相続人が決まったら、相続登記をしなければなりません。
相続登記とは、空き家の名義を被相続人から相続人に書き換えることです。
一般では「名義書換」と言い方の方がなじみやすいこともあります。
名義書換をしておかないと、空き家の真の所有者が誰かわからなくなるので、無権利者が勝手に空き家を売却してしまうおそれなどもあります。
空き家を相続したとき、名義書換(相続登記)をしなくても違法にはなりませんし、罰則もなく、法務局から督促されることもありませんが、将来のトラブルを避けるためには、必ず相続登記をしましょう。
相続登記をするときには、法務局において登記申請をしなければなりません。
申請先の法務局は、空き家がある場所を管轄する法務局です。
相続登記の申請の際には、以下の書類が必要です。
- 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍すべて
- 住民票の除票か戸籍の附票(登記簿上の住所と本籍地の記載があるもの)
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 不動産を相続する人の住民票
- 固定資産評価証明書(名義変更する年度のもの)
- 相続関係説明図
- 遺産分割協議書(遺産分割によって名義変更する場合)
なお、遺言によって相続登記をするときには、遺言書と検認調書(自筆証書遺言や秘密証書遺言によって名義変更する場合)が必要になります。
相続登記をするときには、登録免許税の納付も必要です。
登記申請をするときに収入印紙を購入して添付します。
登録免許税の金額は固定資産税評価額の0.4%です。
空き家の管理を開始する
自分が空き家を相続することになったら、空き家の管理を開始しなければなりません。
まずは空き家の鍵の引き渡しを受けて、空き家の様子を確認に行きましょう。
クリーニングや修繕が必要な箇所などをチェックする必要があります。
そのまま放置していると周辺住民に迷惑をかけそうな場合など、問題がある場合には早めに対処しなければなりません。
また、そのような問題がない場合、今後どのようにして管理するのか、または活用や処分するのかなどを考えていく必要があります。
相続放棄とは?
空き家の相続が起こるとき、必ずしも特定の相続人が相続するとは限りません。
空き家が不要な場合には、相続をしない方法があります。
その方法が「相続放棄」です。
相続放棄をすると、プラスの資産もマイナスの負債も含めて、一切の遺産相続をしなくて済みます。
そこで、空き家を相続する面倒を避けたい場合には、相続放棄をしてしまうことが1つの対処方法になります。
ただし、相続放棄をすると、空き家だけではなく、他の資産も一切相続できなくなるので注意が必要です。
他に価値のある遺産や預貯金などがあって「それについては相続したい」という場合には、相続放棄してはいけません。
反対に、被相続人が死亡したときに、空き家と借金くらいしか残されていなかった、というようなケースでは、相続放棄が非常に有効です。
相続放棄の手続き
相続放棄をしたいときには、家庭裁判所で「相続放棄の申述」という手続きをとる必要があります。
相続放棄の申述をするためには、家庭裁判所に「相続放棄の申述書」という書類を提出します。
このとき、被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)と住民票の除票、相続人の戸籍謄本などの書類が必要です。
申述先の家庭裁判所は、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
また、相続放棄をするときには、被相続人が死亡したことと、借金や空き家が遺産に含まれていることを知ってから3ヶ月以内に行う必要があります。
3ヶ月を過ぎると相続放棄出来なくなって、空き家も借金も相続せざるを得なくなるので、相続放棄をしたいなら、早めに手続きすることが重要です。
忘れていたでは済まされなくなるケースもあるので、相続の話が出た段階で、できる限り優先して取り組んでいくようにしましょう。
相続放棄した場合の管理義務について
空き家を相続したくないけれども相続放棄した場合、1点注意点があります。
この場合、全員が相続放棄をしてしまって相続人がいなくなったら、新たな管理者に遺産を引き渡すまでの間は、相続放棄者が遺産の管理義務を負います。
この義務は、自分のものと同様のレベルの管理義務ですが、きちんと管理しないために他人に迷惑をかけた場合には、管理義務違反となって損害賠償義務を負う可能性もあります。
相続放棄した人が空き家の管理義務を免れるためには、相続財産管理人を選任する必要があります。
空き家の相続人がいない
相続財産管理人とは、空き家を誰も相続する人がいない場合に、相続財産を管理して、清算を行う人のことです。
相続財産管理人を選任するためには、被相続人の最終の住所地の家庭裁判所において「相続財産管理人選任申立」という手続きをする必要があります。
家庭裁判所によって相続財産管理人が選任されたら、その人に空き家の鍵を渡して管理をしてもらえるようになるので、相続人は空き家の管理義務から解放されます。
このように、空き家の相続人になると、いろいろな相続手続きが必要になります。
相続放棄をしても管理義務がなくならず面倒が起こるので、できれば空き家を相続放棄するのではなく、相続して活用することを考える方がおすすめです。
空き家の活用方法
次に、空き家を相続したときの活用方法をご紹介します。
空き家の相続をしたにしろ、相続を放棄したにしろ、空き家というのは活用方法がたくさんあります。
その1つ1つをメリットデメリットを含めて見ていきましょう。
相続した人が住む
まずは、相続した人が自分で住む居住用としての活用方法があります。
この方法は、もっとも簡単ですが、実現できるケースは限られます。
まず、遠方に居住している場合にはこの方法を利用することはできませんし、近くに住んでいても、既に家族と一緒に自分の家を購入して居住している場合などには利用できません。また、すぐにお金が必要なケースで空き家を売却したい場合などでも利用しにくいです。
メリット
空き家に自分で住む方法のメリットは、何より手続きが簡単なことです。賃借人や売却先を探す必要はなく、引っ越しをして入居をすれば終わります。
また、自分で住むので管理も自分で行うことができるため、無駄な管理費用もかかりません。
デメリット
空き家に自分で住む方法のデメリットは、居住場所が限られることです。
空き家が住みにくい場所である場合には利用できないか、不便を我慢して住まないといけないことになります。
相続した空き家に住む場合の具体例
空き家に自分で住む方法を利用する場合の具体例を見てみましょう。
たとえば、両親が死亡したときに自分が比較的近くで賃貸住宅に住んでいた場合、実家に引っ越して住み始める場合などがあります。
相続を機に、田舎に帰って暮らそうと考える場合などでも、空き家に自分で住む方法を利用できます。
また、両親と一緒にもともと実家で暮らしていた場合には、相続をしてそのまま家に住み続けることが多いです。
空き家を賃貸に出す
次に、空き家を賃貸に出す活用方法をご紹介します。
この方法は、空き家を借りてくれる人を探して、賃貸借契約を締結する方法です。
そこで、まずは家を人に貸せる状態にまで整える必要があります。
修繕が必要な箇所は修繕しないといけませんし、リフォームが必要になるケースもあります。
人に貸せる状態になったら、次は賃借人を探さないといけません。
このとき、自分で個人的に借り手を見つけるのは難しいので、不動産会社に依頼して、借り手を探してもらいましょう。
田舎などの場合には、自治体が空き家バンクというサービスを実施していることもあります。
空き家バンクを利用すると、その地域で住める空き家を探している地方移住者などを探すことができて、便利です。
このようにして空き家の借り手が見つかったら、入居希望者との間で賃貸借契約を締結して空き家を貸します。すると、その後は借り手から賃料が支払われるようになります。
メリット
空き家を賃貸に出すメリットは賃料収入を得られることです。
空き家を活用しなければ毎年固定資産税を支払うだけになってしまいますが、賃貸したら、それを上回る収益を得られるので、儲けにつながります。
また、人が居住していたら、その人が空き家を管理してくれるので、自分で管理する必要がなくなることもメリットとなります。
デメリット
空き家を賃貸に出すデメリットは自分では利用できなくなることです。
賃貸借契約を締結すると、簡単には契約の解除や更新拒絶ができなくなるので、しばらくの間は空き家を人に貸したままの状態になることを覚悟しないといけません。
何かの事情で突然自分が住みたくなったとしても、出ていってもらうことができません。
また、常に空き家を人が住める状態に維持しないといけないので、維持費がかかります。
更に空き家が古くなっていたら修繕費用がかかります。
空き家を所有している以上、毎年固定資産税もかかってきます。
空き家を賃貸したとしても、その金額が全額利益になるわけではないので、注意が必要です。
相続した空き家を貸す際の具体例
空き家を賃貸に出して活用するケースの具体例をご紹介します。
たとえば、田舎の家を相続した場合の事例です。
Aさんは、空き家を相続したので、その家を修繕して人に貸せる状態に整えて、空き家の近くの不動産業者に相談をして、空き家の借り手を探してもらいました。
借り手が見つかったので、不動産業者に間に入ってもらって賃貸借契約を締結しました。
そして空き家の鍵を引き渡して、その後は毎月賃料が振り込まれるようになり、今は安定した賃料収入を得て生活費の足しにしています。
空き家が大きい場合には、シェアハウスにして、複数の人に賃貸をすることも可能です。たとえば4人に貸したら4人分の賃料が入ってくるので、メリットがより大きくなります。
空き家を取り壊して別の物件を建てる
空き家の活用方法としては、空き家を取り壊して別の物件を建てる方法もあります。
この場合、まずはどのような物件を建てるかを考えないといけません。
そして、空き家を取り壊す費用と新しい建物を建てる費用をどのように調達すべきかも検討する必要があります。
多くのケースにおいて、建物建築費用についてはローンを利用します。そこで、建物の賃貸によって確実にローンを返済出来るように計画を立てることが必要です。
計画を立てることができたら、業者に依頼して空き家を取り壊し、新しくアパートやマンションなどを建てます。
その上で、入居者を探して賃貸借契約を締結すると、その後は継続的に賃貸収入を得ることができます。
メリット
空き家を取り壊して新しく建物を立てる方法のメリットは、多くの賃料を得られることです。
空き家をそのまま貸しても高額で賃貸できることは少ないですし、借り手の数は基本的に一人(一家族)です。その点で、どうしてもあまり高額な家賃収入は見込めません。
これに対し、新しくマンションやハイツ、アパートを建てたら、複数の人に貸せるので、多くの賃料が入ってきます。
新築なので家賃を高くしやすいですし、設備をきれいにしたら、高額な賃料でも入居者を見つけやすいです。
デメリット
空き家を取り壊して新しく建物を建てる方法は、それなりにリスクがあります。
高額なローンを組むことが多いため、借り手が思うように見つからないと、とたんにローン返済が苦しくなってしまいます。
設備をきれいにするために投資額を多くしてしまった場合など、目論見が外れると大変な損失になります。
建物を建て替える場合には、事前にしっかりと調査をして、確実に借り手が見つかるという試算のもとに計画を進めることが必要です。
空き家を取り壊して別物件を建ててから貸す際の具体例
空き家を取り壊して上に建物を建てる方法で成功した、具体例を見てみましょう。
田舎の比較的大きな敷地内の空き家を相続したBさんのケースです。
Bさんの場合、周辺の賃料相場や人気度を調べてみると、最近は結構移住希望者が多くなっていて、住宅需要があることがわかりました。また、賃料も比較的高額になっています。
そこで、10軒ほど入居できるアパートを建てたら、十分収益が見込めることがわかりました。
そこで、空き家を取り壊し、ローンを組んでアパートを建てて、不動産業者に入居者を探してもらい、賃貸借契約を締結しました。このことで安定した収入が入ってくるようになり、これまでより余裕をもって生活ができるようになりました。
更地にして活用する
空き家の活用方法としては、更地にして活用する方法もあります。
この方法では、空き家を取り壊し、土地は更地にしたまま利用します。
たとえば、駐車場にしたり資材置き場にしたり、太陽光発電を行ったりするなどの方法があります。
メリット
更地にして活用する方法のメリットは、借り入れが不要なことです。
土地上に新たに建物を建てるとその分の費用がかかってローンの利用が必要になりますが、更地にしたまま活用するなら、そのような費用は不要です。また、土地を比較的自由に処分できます。
土地上に家を建てて人に貸す場合と違い、駐車場や資材置き場などの契約の場合、解除や解約が簡単です。
そこで、自分で住みたいときには、比較的簡単に解除を行い、自分で利用することができます。
近隣の賃料相場が上がってきたときに新たにアパートを建てて人に貸すこともできますし、土地値が高額になったときに売却して、値上がり益を得ることなども可能になります。
デメリット
更地にして土地を貸す方法のデメリットは、収益が小さいことです。
駐車場や資材置き場などとして賃貸しても、地代は非常に安いです。
また、土地を利用に足りる状態に保つ必要があるので、ある程度の管理が必要です。
駐車場などにする場合でも、防犯管理などの必要があり、経費がかかります。
このように、更地にして貸す方法では、大きな収益は見込めないので、活用方法をすぐには決められず、時期を見て建物建築か売却かを検討する期間における対処方法として利用することがおすすめです。
空き地を更地にする際の具体例
土地を更地にして活用する方法の具体的なケースをご紹介します。
Cさんは、比較的広い敷地の空き家を相続しましたが、空き家の傷み具合が酷かったので、取り壊すことにしました。ただ、更地の上に建物を建てると高額な費用がかかり、投資額を回収できるかどうかがわからないので、しばらくは土地をそのままの状態にして、駐車場として賃貸することにしました。そこで、整地をして駐車場の経営を開始しました。
駐車場の賃料はさほど高額ではありませんが、毎年の固定資産税や管理費用+αくらいの金額は出ているので、多少の収益になっています。
将来、土地が値上がったタイミングで売却すれば良いと思い、気長に待ちながら過ごしています。
相続した空き家を売却する
空き家を活用する方法として、売却することが考えられます。
この方法は非常にわかりやすいです。
売却をするときには、まずは不動産業者に査定をしてもらう必要があります。
査定によって出た金額を参考に空き家を売り出すことになるので、査定金額は非常に重要です。
不動産業者によって査定額が大きく異なるので、査定方法は非常に重要です。ここでおすすめの査定方法は、インターネット上の一括査定を利用する方法です。
一括査定を利用すると、複数の不動産業者に一度に査定依頼を出すことができます。
複数の不動産業者から査定額が返ってくるため、その中で最も高額な査定を出してくれた不動産業者に実際に不動産の仲介を依頼することができます。
このようにして不動産仲介業者が決まったら、実際に買い手を探してもらって不動産の売却手続きを進めます。
買い手が見つかったら、価格交渉をして、売却価格が決まったら売買契約を締結します。そして、決済日に代金の支払いを受けて、空き家の引き渡しをします。
メリット
空き家を売却するメリットは、売却によって空き家の管理をする必要がなくなることです。
自分の手を離れるので、どのように活用すべきか考える必要もありません。
また、所有者ではなくなるので、固定資産税や都市計画税の負担もなくなります。
高値で売却できたら、高額な現金が手元に入ってくることも大きなメリットです。
このように、空き家を賢く売却できたら、非常に大きなメリットがあります。
デメリット
空き家を売却するデメリットは、活用ができなくなることです。
活用して賃貸に出したら賃料収入が入ってきますが、売却してしまったらそのような利益は期待できません。また、将来の値上がり益を失うこともあります。
売却後に土地値が上がったら、損をしたと考えることになる恐れもありますし、売り急いで損をしてしまうおそれもあります。
自分で住みたいと思っても、手元から失われているため、不可能です。
このように、空き家を売却するときには、デメリットにも注意が必要です。
賢く売るタイミングを見計らって高額な価格で売却を進めるためには、腕の良い不動産業者に仲介を依頼することが必須です。
空き家を売却するときには、インターネットの一括査定を利用して、不動産売却に長けている良い業者を探して仲介を依頼しましょう。
空き家を売却する際の具体例
空き家を売却するケースの具体例をご紹介します。
Dさんは、田舎の空き家を相続しましたが、自分では住まないし、管理も面倒なので売却することに決めました。そこで、ネットの不動産査定サービスで6社に一括査定をしたところ、各社の査定額に400万円の差がありました。
最も高額な査定を出してもらった会社に仲介を依頼して、買い手を探してもらいました。
購入希望者と価格交渉をして、お互いに納得したので、売買契約を締結。決済日に空き家の鍵と不動産登記のための委任状などの書類を渡し、代金を全額振り込んでもらえました。
このことで、空き家管理の必要がなくなって心配事がなくなりましたし、多くの現金が入ってきて家族も非常に喜んでいます。
寄付する
空き家の活用方法としては、寄付をすることも考えられます。
この場合、寄付先を検討する必要があります。
考えられるのは、自治体や個人、法人や公益法人、自治会や町内会などです。ただ、寄付とは言っても必ずしも受け入れてくれるわけではありませんし、寄付によって税金が発生することもあるので、注意が必要です。
自治体に寄付する方法
まず、自治体に寄付をする方法をご紹介します。
ただ、自治体はなかなか寄付を受け入れてくれません。
自治体が不動産の所有者となると、その分固定資産税の収入が減ってしまうからです。
自治体に空き家を寄付するためには、自治体が空き家を受け入れるメリットを感じられる場合であることが必要です。
具体的には、まずは自治体の窓口に相談に行きます。
寄付を受け入れてもらえるということであれば、寄付申出書や公図、全部事項証明書や現況写真などの必要書類を提出します。状況によって様々ありますので、他にも必要な書類があるか、窓口で確認しましょう。
隣地の所有者に寄付する方法
次に、個人に寄付する方法があります。
この場合、最も受け入れてもらいやすいのは、隣地の所有者です。
隣地の所有者は土地を合わせて所有することにより、高値で売却できたり活用がしやすくなったりするメリットがあるからです。そこで、空き家を相続したら、隣地の所有者に受け入れてもらえないか、相談しましょう。
受け入れてくれるということであれば、贈与契約書を作成して、空き家の鍵と名義書換に必要な書類を渡します。ただ、この場合、贈与を受ける隣地の所有者に贈与税支払い義務が発生することが多いので、注意が必要です。
事前に贈与税の金額がどのくらいになるのか調べておくことが、トラブル防止のポイントです。個人同士の取引であっても、必ず贈与契約書は作成しておきましょう。
贈与契約書がないと名義書換もできませんし、所有権が相手に移転している原因を証明することもできないため、自分に固定資産税の請求書が届いてしまうこともあるからです。
贈与契約書は、2部作成して贈与者と受贈者がそれぞれ1通ずつ所持します。
法人に寄付する方法
空き家や土地を法人に寄付する方法もあります。
ただ、普通の空き家を営利目的の法人に寄付することは難しいです。
空き家を取得すると管理の手間もかかりますし税金の負担も発生するため、法人にとってメリットが大きいとは言えないからです。
空き家に価値がある場合などでは、寄付を受け入れてもらえる可能性もありますが、そのように価値が高い物件であれば、寄付をするより売却を考える方がメリットが大きいです。
また、公益法人に寄付をすることも考えられます。たとえば、学校やNPO法人、宗教法人などに寄付をする方法です。
営利目的法人よりは、こちらの方が受け入れてもらいやすいです。また、公益法人への寄付の場合には、税制上の優遇措置があり、譲渡所得税が発生しないことがあります。実際に譲渡所得税を発生させないためには、税務署に申請をして承認を受ける必要があります。
自治会や町内会に寄付をする方法
空き家を地元の自治会や町内会などに寄付をする方法もあります。
この場合、まずは自治会や町内会に寄付の打診をして、受け入れてもらえるかどうかを相談しなければなりません。
受け入れてもらえるとしたら、相手がどのような形で受け入れるのか、検討してもらう必要があります。
自治会や町内会には法人格がないので、「自治会」として土地や建物の所有者になることができないためです。そこで、原則的には、自治会の誰か個人(会長などの構成員)が不動産の所有者になる必要があります。
ただ、一定地域で活動を行っている団体は、市町村において「地縁団体」の認可を受けていると、不動産の所有者として認めてもらうことができます。また、認可地縁団体になると、公益法人の場合と同じような税制上の優遇措置も受けることができます。
そこで、自治体や町内会に空き家の寄付を行いたい場合、それが認可地縁団体になっているかどうかを確認する必要があります。
メリット
寄付をする方法のメリットは、空き家の管理が不要になって手間がなくなることです。また、固定資産税の支払いも不要になります。
さらに、誰も購入を希望しない価値のない土地や建物であっても、処分することができる点が大きなメリットです。
空き家の活用がどうしてもできずに困った場合には、寄付を考えることが役立ちます。
デメリット
寄付のデメリットは、不動産の活用の可能性がなくなることです。
自分で住むこともできませんし、賃貸に出して収益を得ることもできません。
また、今は価値がなくても、将来電車の線路が通るなどの事情変更により、土地値が大きく上がる可能性もあります。そうしたとき、寄付をしてしまっていたら、値上がり益を得ることはできなくなります。
空き家を寄付する際のの具体例
寄付をする場合、隣地の所有者と話し合いをして贈与をしたり、自治会や町内会に寄付を受け入れてもらったりする方法が現実的です。
まずは、これらの人や団体に話を持ちかけて、相談をして寄付の手続きを進めましょう。
空き家相続のまとめ
今回は、空き家を相続したときの対処方法を解説しました。
空き家を相続したら、まずは遺産分割協議をして誰が相続するかを決めて、相続登記を行いましょう。そして、空き家の活用方法を決めて、上手に活用をすべきです。
空き家の活用方法を以下にまとめます。
【空き家を相続したら…】
・居住用にする
・賃貸用にして貸す
・解体して別物件を建てて貸す
・解体して更地にして活用する
・そのまま売却する
・そのまま寄附する
どれか1つでも可能な状況であれば、相続した空き家は有効に活用できます。
また、空き家を活用する方法としては、売却をして現金を得ることも非常に有用です。高値で売るためには、不動産一括サイトを利用して良い不動産業者を探す方法がおすすめです。
今回の記事を参考にして、空き家の相続によってメリットが得られるように賢く工夫をしましょう。
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